16th MF bunko J light novel rookie award the excellence award

第16回MF文庫Jライトノベル新人賞

第16回MF文庫Jライトノベル新人賞 審査員特別賞

PAY DAY 1 日陰者たちの革命

少年よ、生き延びろ。

著者:達間涼 イラスト:小玉有起

PAY DAY 1 日陰者たちの革命
PAY DAY 1 日陰者たちの革命

第16回MF文庫Jライトノベル新人賞

第16回MF文庫Jライトノベル新人賞 審査員特別賞

3月25日発売

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「命を稼ぎなさい」と魔女は言った── ヒトの“命”を奪う異形の犯罪者、『カツアゲ仮面』。そんな都市伝説が旭日市で囁かれるようになって早二ヵ月。埠頭高校に通う不良少年、鳥羽春樹は、魔女に支払う“命”を求めヒトの“命”をカツアゲする日々を過ごしていた。魔女に脅され、警察には追われ、完全無敗のヒーロー『ブレイズマン』までもが立ちはだかる。刻一刻と“命”の支払い期限が迫る中、春樹は仲間達と共に現状打破の秘策に打って出る。魔女に奪われてしまった「俺達」の青春を、いつかこの手に取り戻すことを夢に見て。命を賭けて、命を稼ぐ。怪物に貶められてしまった日陰者たちが送る、青春奇譚。

RECOMMEND

志瑞祐

 ――『PAY DAY』。

 新人賞に投稿されたこの作品を読み終えたとき、僕はしばらく息を止めていた。審査員として、あくまで客観的に作品を評価する立場で読んでいたのだが、いつしか、この物語の熱量にあてられ、のめりこんでいたのだ。

 投稿作の原稿は、たしかに荒削りだった。構成はどこかぎこちなく、映像的な文章はスタイリッシュではあるものの、あまり読みやすいものとはいえなかった。しかし、なにか目を離せなくなるような熱が、その原稿には確かにあった。

 本作品の主人公である春樹は、圧倒的な弱者だ。異能の力はあるものの、正義のヒーローになることはできず、中途半端な悪の走狗となりはてている。ヒーローどころか、むしろヴィランのような立場なのだ。そんな彼の前に立ちはだかるのは、太陽のごとく輝く本物のヒーローなのである。そんな、『持たざる者』である主人公が、大切なものを守るために賭けられるものは、たった一つ――己の命しかない。
『PAY DAY』――この作品は、くそったれな世界で、命をチップがわりに戦う、少年少女たちの物語だ。文字通り、命賭け 、  、  、 で世界に抗う、革命の物語だ。

 そして、現実リアルの物語でもある。流れゆく日々の中で、つい忘れがちになるが、僕たちも時間=寿命をチップに換えて生きている。魔女アポトーシスのような理不尽で邪悪な何かに、気付かぬうちに、少しずつその命を奪われている。けれど、心のどこかでは、命を存分に(あるいは乱暴に)賭けて戦ってみたい、そんな憧れを抱いているはずだ。
『PAY DAY』は、そんなあなたにこそ読んで欲しい作品である。

 この作品は、ライトノベルのジャンルでは、異能バトルに属するのだろう。だが、その本質は、ド直球の青春小説だ。

 恋愛ラブコメだけが青春ではない。青春とは、葛藤と後悔と、喪失と犠牲。二度と取り戻すことの出来ない大切な何か、そんな、ある種の苦々しさを孕んだ概念だ。その意味で、本作品は、スティーヴン・キング、ライトノベルでは、『ブギーポップ』シリーズの系譜にあるような作品なのだと思う。

 さて、投稿作の段階ではまだ荒削りだった本作品は、改稿を経て生まれ変わった。

 文章は読みやすく、構成は工夫され、よりエンタメ性を増した。しかし、根底に流れるテーマ、物語に託された切実な想いはそのままに、むしろその魅力を増している。

 新たな才能の誕生に立ち会えたことを、嬉しく思う。

志瑞祐

てにをは

『腹をくくった悪者たち』の痛快さと悲哀に心が揺さぶられます。
その上で繰り出されるバトル、アクション、スペクタクル!
乗り心地の良い極上のジェットコースターとはこのことでしょう。

誰にとっての青春もそうであるように、この日陰者(ヴィラン)たちの青春もまた文字通り一刻を争う。
だからこそ読み進めるごとに彼らのことが愛おしくなっていく。

てにをは

CHARACTER

鳥羽春樹 小・中・高一貫の不良少年。とある事件で顔に火傷を負って以来、生まれついての目つきの悪さと相まって人からは悪い印象を持たれがち。
爆薬のフォールド 通称、カツアゲ仮面。チップを爆薬に変換する能力を持つ。消費した寿命と火薬の量は比例するが、一度爆弾に換えたチップは元には戻らない。
笛吹小夏 内気で声の小さな桃色少女。コバンザメのように、いつも春樹に連れ添っている。ブレイズマンの大ファン。
枝のフォールド 背中のチャックから伸ばした枝を操る能力を持つ。それは時に鋭利な刃物となり、時に命を吸い上げる管にもなる。
沢渡秋穂 「アキ様」のあだ名で慕われる王子様系女子。ファンサービスに忙しくしている一方で、悪友である春樹達ともつるんでいる。
ブリングのフォールド 通称、運び屋。瞬間移動の能力を持つ。自分及び触れた物体を瞬時に移動することができる。
門真冬也 春樹の幼馴染で、生粋の野球少年。面倒見がよく、春樹達のことも気に掛けている。最近、実家の八百屋を手伝い始めた。
砂のフォールド 通称、砂の巨人。砂で構築した変幻自在の体を操る能力を持つ。砂の肉体が傷付くことはないが、その間寿命を消費し続ける。
アポトーシス 過去最も恐れられた都市伝説、通称、日傘の魔女。春樹達を《フォールド》にした張本人であり、現役を退いた今も暗躍を続けている。
ブレイズマン 《フォールド》から人々を守る完全無欠のヒーロー。国民的スターとしての露出は多いが、その正体を知る者は少ない。

keyword

フォールド
ヒトの命をチップに換金する怪物。その手口は《フォールド》によって異なるが、顔を隠しているという性質から都市伝説のように語られることも多い。日々課せられる命のノルマに苦しみながらも、彼らは今日も生きるためにチップを稼ぐ。
チップ
表裏の無い銀色の硬貨。体外に零れ落ちたヒトの命が持つ形で、その価値は失われた寿命と等価値である。《フォールド》は寿命をチップへと変換し、消費することで能力を行使することが出来る。
特務課
対《フォールド》を想定して編成された警察組織。ブレイズマンとは協力関係にある。彼らに求められる役割は直接的な戦闘というよりも、「人命第一」の防衛戦である。

BOOK

PAY DAY 1 日陰者たちの革命

著:達間涼

イラスト:小玉有起

ISBN:9784046800770

PAY DAY 1 日陰者たちの革命

「命を稼ぎなさい」と魔女は言った──
ヒトの“命”を奪う異形の犯罪者、『カツアゲ仮面』。そんな都市伝説が旭日市で囁かれるようになって早二ヵ月。
埠頭高校に通う不良少年、鳥羽春樹は、魔女に支払う“命”を求めヒトの“命”をカツアゲする日々を過ごしていた。
魔女に脅され、警察には追われ、完全無敗のヒーロー『ブレイズマン』までもが立ちはだかる。
刻一刻と“命”の支払い期限が迫る中、春樹は仲間達と共に現状打破の秘策に打って出る。
魔女に奪われてしまった「俺達」の青春を、いつかこの手に取り戻すことを夢に見て。
命を賭けて、命を稼ぐ。怪物に貶められてしまった日陰者たちが送る、青春奇譚。

第16回MF文庫Jライトノベル新人賞