ここでは、“作品作りのポイント”について、各編集者の意見を5項目に分けてご紹介します。
編集者によって考え方や重視するポイントが違いますし、また、ただひとつの正解というものはありませんが、“もっと面白い作品”にするためのヒントがきっとあるはず。新人賞に応募してみようという人は、参考にしてみてください!
キャラクターについて
キャラクターで大事なのは、読者の共感を得られるような魅力ある個性。
主人公や登場キャラに共感できれば、物語に入り込むことができます。また、とにかく可愛かったり、発言や行動がカッコよかったりする強烈なキャラクターが登場すれば、キャラたちの掛け合いや行動、心情描写を通して「もっとこのキャラを知りたい」と思わせる吸引力を作品に与えることができます。そうしたキャラたちが織りなす関係性が上手に描ければ、言うことなし。世の中に強烈な印象を与えるキャラクターを、ぜひあなたの手で生み出してください!
主人公がカッコイイかどうか、ヒロインが可愛いかどうか……この2点が、かなり大事です。
良いやつ・カッコイイ人・すごい人などが主人公なら、読んでいて気持ちがいいですし、可愛い女の子・優しい女の子・素敵な女の子などがヒロインなら、読んでいて嬉しくなるのではないでしょうか。そういうキャラクターを生み出してください。
そのほかでは、きちんと各キャラクターがたっているか、個性的か──消極的に言えば登場キャラすべてが、ちゃんと別人であると読者が認識できるかどうか、というのを1つの基準にするとよいでしょう。
魅力的なキャラクターは、物語の世界の中で一人の人間として確立されている必要があります。
物語を書く際には、登場するキャラクターが何をされたら怒るのか? 何をされたら喜ぶのか? こういう状況になったらどういう反応をするのか? などを隅々まで想像するように心がけましょう。
ストーリーについて
話の大枠を誰かに話した時に『面白そう』とか『読みたい』と思われるかどうか。
簡単に言うと、「話の大枠を誰かに話した時に『面白そう』とか『読みたい』と思われるかどうか」、がストーリーの一番大事な点です。どんな目的でキャラクターが行動しているのかハッキリ示しながら、読み進めるうちに驚きや意外性を読者に与えたり、楽しませたり、思いもよらない結末を提示できていたりするかどうかです。読者がのめりこんでしまうストーリーを生み出してくれることを期待します。
ストーリーで重視すべき点は、大きく分けて2つです。
まず大事なのは、ゴールとゴールまでの道のりが提示されているか、という『物語の目的と、そこまでの流れ』です。これをわかりやすく提示できているかどうか、というのはとても重要なポイントです。
そして、その上で大事なのが、ライトノベルらしいキャラクター小説となっているか、あるいは物語の展開が爽快感・ワクワク感をあたえてくれるか、予想を裏切ってくれるか、といった『読んでいて感情が揺さぶられるものかどうか』という点です。坦々と描くのは避け、読み手の心を喜怒哀楽で揺さぶりましょう。
物語で重要な要素は、スタートからラストに至る間で何が変化したかです。
主人公の心の成長、肉体的な成長、ヒロインの救済、関係の修復など、変化といってもいろいろありますが、どんな変化を描こうとしているのか、そこを押さえると、物語のテーマがはっきりしてきます。そうして、そのテーマに、ストーリーの流れがちゃんと沿っているか、その点を具体的に検討していくとよいでしょう。
世界観・アイディアについて
世界観やアイデアの面白さで話を引っ張れるように。
話のスケールの大小を問わず、「ものすごく楽しそうな世界だな。自分もこの世界に入りたい」とか「すごい発想だな」と読者に思わせることができるのは、魅力的な世界観やアイデアが根本にあってこそ。ただし、どんなにすごい世界観を作っても、大なり小なり設定の粗はどうしても出てくるもの。設定の些細な点にこだわってアイデアが台無しになるのはもったいないことです。すごいアイデアを思いついたなら、「フィクションなりのリアリティ」、つまり作品にどう客観性を持たせるか意識しながら、その世界観やアイデアの面白さで話を引っ張れるように頑張ってみてください。
アイデアで大切な点は、新規性あるいはアレンジ性です。
ゼロからまったく新しい物を生み出せているか、そうでなければ、既存のものを調理して新しさを出せているか、というところを意識してください。
世界観などの設定面では、『その世界が本当にあるかも……?』と思わせてくれるようなリアルさを提示してほしいと思います。フィクションの世界を、いかに『嘘くさい』『なんでそうなの?』と思わせないか、工夫して考えてみてください。
物語のどこがどういう類型で、どこが新しい要素なのかなどを意識する。
まったく新しいアイデアを発想することはなかなか難しいですが、既存のジャンルに別の要素を組み合わせてみる、既存のアイデアを2つ足してみる、既存のアイデアのお約束から少しズラしてみる、などによって、新規性を作ることは可能です。さまざまな物語に触れる際に、その物語のどこがどういう類型で、どこが新しい要素なのかなどを意識するとよいでしょう。
構成力について
ストーリーに比べて、より細かい作品へのこだわりが試されるのが構成力です。
最初の場面で物語に引き込まれるか。途中で、もっと読み進めたいと思う展開や驚きを演出できているか。場面ごとの盛り上がりや淡々とした描写などの使い分けができているか。テンポよく話を進めているか。終盤にかけて、読者の心を熱くさせるような場面を用意できているか。ご都合主義な感じや唐突感がなく、物語の盛り上がりを描けているか。技術的な要素が多いので、しっかりと自分なりに研究しながら書き続ければ、構成力は確実に身につきます。頑張りましょう。
読者の感情を揺さぶるかなめの技術が、構成力だと言えるでしょう。
冒頭での惹きつけや、最後の盛り上がりもとても大事ですが、執筆の際ぜひ意識していただきたいのは、『きちんと起承転結を構築できているか』『メリハリ、起伏がちゃんとつけられているか』という2点です。坦々とその場面の情景だけ描写したり、作中の事実だけが描かれているのでは、せっかくの面白い素材やストーリーも台無しです。その面白いものを、ちゃんと読者に届けるための、読者の感情を揺さぶるかなめの技術が、構成力だと言えるでしょう。
ラストは十分に盛り上がっているか? などを執筆後にチェックするようにしましょう。
構成はとにかく重要な要素です。100枚の作品だとすると、冒頭の3ページで読者の興味を惹きつけられているか? 30ページで物語の中心テーマが提示されているか? ラストは十分に盛り上がっているか? などを執筆後にチェックするようにしましょう。場合によっては執筆後に再度プロットを再検討して、不要なエピソードや物語の流れを妨げている箇所を削っていく必要も生じます。
文章力について
自分だけにわかる文章ではなく、人に読ませるための文章を書く。
まず求められるのは、文章の読みやすさです。そのうえで、独自の魅力ある文章を書けるかどうかが問われます。読んでいて、文章や言葉づかいへの違和感から読者が物語世界に没入できなくなるようではいけません。なお、「……」の使用法など小説を書く際の一般的な約束事が身についているかどうか、という点はもちろん大事ですが、それだけですぐに落選、ということはまずありません。「自分だけにわかる文章ではなく、人に読ませるための文章を書く」ことを意識しましょう。客観性を大切に!
ルールにはちゃんと注意しましょう。
絶対に満たして欲しいのは『誤字脱字がないこと』『単語の誤用や文法の誤まりがないこと』『最低限の小説文法ルールに則っていること』です。物語としての演出(おバカなキャラが言葉を間違えているのをわざと書く、など)は除きますが、ルールにはちゃんと注意しましょう。もし演出の一環だったとしても、読みづらかったり、表現が有効に働いていなかったりするのであれば、オーソドックスな正しい言葉の使い方をする方が無難です。
なるべく文章を簡潔に書く努力をした方がよいでしょう。
文章力に自信がないのであれば、なるべく文章を簡潔に書く努力をした方がよいでしょう。また、誤字脱字が多い原稿は、推敲が行われていない証拠です。きちんと見直す癖をつけましょう。