歴代イラストレーターによる描き下ろしお祝いイラストも!

作家  綾里けいしより 気がつけばここまで来ていて、長かったような短かったような不思議な感覚がします。一瞬でしたし、水の中をもがくような日々でもありました。それでも、本を書き綴る日々は、振り返ってみればとても楽しかったです。こうして、私が未だに執筆を続けていられるのは、読者の皆様のおかげです。今まで綾里の作品を読んできてくださって、本当にありがとうございました。少しでもお楽しみ頂けたのでしたら、これ以上の幸いはございません。お礼として私にできることは、いい物語をお届けすることのみと思うので、これから先も精進していく所存です。引き続き、読者様に物語を楽しんで頂ければとそう思います。次の十年、新たな御話を、どうかよろしくお願い申し上げます。

  • B.A.D. Beyond Another Darkness ─ 小田桐君。理由なく人を殺せるぐらいでないと、狂っているうちには入らないさ 男でありながら鬼を孕んだ青年——小田桐勤と、ゴスロリに紅い唐傘を挿し、チョコレートを食べ、惨劇を好む、不吉な少女——繭墨あざかの挑む怪奇譚。残酷で切なく、醜悪に美しいミステリアス・ファンタジーです。歪な怪異に人の業、醜悪さと陰惨さ、和と洋の様々な美しさを詰め込まれ、デビュー作にして全てが綴られた話。

    作者が語る思い出 綾里の原点にして、全てを詰め込んだ作品です。こちらを書き切ることができたのは、本当に幸いなことでした。特に繭墨あざかは、自分の中で最も思い入れの深いキャラクターでもあります。彼女には、キャラクターへの理想とする様々なものを込めました。最終巻を書いた時には、魂が抜けた心地がしたものです。二度と、こんなものは書けまいと当時、思いました。今でも時に、あの醜悪さと美しさを目指した世界が無性に懐かしくなります。「B.A.D. Beyond Another Darkness」シリーズ 本編全編13巻、短編集4巻 2010年1月〜2014年12月 ファミ通文庫刊 イラスト:kona

  • アリストクライシ ─ 私はずっと、
貴方を探していたのかもしれませんね 生きたまま埋葬された青年を掘り出したのは一人の美しい少女だった。心を持たないからと人間から忌み嫌われ『名前のない化け物』と呼ばれた青年グラン。そして、同族を全員殺すと決意した『穴蔵の悪魔』の少女エリーゼ。死ねない怪物と家族を殺された少女の、ふたりぼっちの復讐の旅のお話。二巻「Dear Qeen」は綾里の中でもお気に入りの一冊。人の幸いとは。

    作者が語る思い出 毎巻、最初に入れていた詩が気に入っています。続きの想定がある話なので、いつか書きたいなと願っておりますが、完結を迎えさせるには相当な気力と技術力が必要なので、まだ先となりそうです。面目ない。作品紹介でも語りましたが、「Dear Qeen」は自分がテーマとしたかったことを全て書ききれた一冊でした。人の幸いとは何か。少しでも届くものがあったのならば、嬉しく思います。この二人のことも、日々懐かしく思い出されます。「アリストクライシ」シリーズ 全3巻 2013年3月〜2014年8月 ファミ通文庫刊 イラスト:るろお

  • ヴィランズテイル 有坂有哉と食べられたがりの白咲初姫 食糧と書かれた宅配便に入っていたのは『淑女』と名高い同級生、白咲初姫だった。姉を殺し内臓を食べた人物に、自分も食べて欲しいという。彼女は有坂家次男である、有哉を犯人だと言い、自分を食べろと居座り始めた。折しも有哉は兄妹の部屋から誰かの内臓と手首を見つけてしまい…そこから始まる歪で愉快な事件の御話。カニバリズム希望ヒロインが書けて楽しかったです。また、この家族は書きたいなと。

    作者が語る思い出 サスペンスの皮を被った、家族ものをやりたかった話でした。実は大好きなんですよね、家族もの。歪で壊れた有坂家は気に入っているので、また関連の作品を書けたらなと願っております。なかなか予定が取れておりません。面目ない。作品紹介でも語っている通り、カニバリズムヒロインは書けて楽しかったです。こちらは、今書いた方が面白いものができる気がしてもいます。また改めて、こうしたテイストの作品にも挑戦したいものです。「ヴィランズテイル」シリーズ 全1巻 2015年5月 ファミ通文庫刊 イラスト:リラル

  • 幻獣調査員 ─ これはひとりぼっちの闇の王様が、ある少女に出会うお話です 国家は幻獣を調査し、時には駆除をする専門家を定めた。そのひとりである調査員のフェリは「人と幻獣の共存」を胸に、世界で唯一の幻獣書を完成させるため旅を続ける。兎頭の紳士、クーシュナと試験管蝙蝠のトロー、白い少女フェリの三人が、各地の幻獣に纏わる事件を解決していく旅物語。

    作者が語る思い出 念願の人外×少女でもあります。人外への色々なロマンを詰めに詰めました。個人的に、一つの話で全体の見方が変わるギミックが上手くいった作品かと思っています。念願の人外×少女が書けて、とても嬉しかったです。大好きなんですよね、人外×少女。白い少女と闇の王様の話は絶対に書きたかった形の一つです。また人外と人の関りをこれでもかと書けて大変に幸せでした。童話のような全体の雰囲気など、未熟なところあれどもやりたいことをやりきれた作品でもあります。とはいえ、追加の短編集は書きたいです。「幻獣調査員」シリーズ 既刊2巻 2016年6月〜 ファミ通文庫刊 イラスト:lack

  • 魔獣調教師 ツカイ・J・マクラウドの事件録 獣の王はかく語りき ─ 魔獣には人を狂わせる力がある ‘‘魔獣’’── その身体に人に酷似した部分を持つ獣が存在する世界。人々が鑑賞・性愛の目的で雌型の魔獣を嗜好、盲愛して狂気に堕ち、世間には様々な事件が充ち満ちていた。そこで好奇心旺盛な青年ツカイは、帝国最高峰の魔獣調教師『獣の王』と謳われる、ツカイ・J・マクラウドと友好を深め——真実に至る物語が幕を開く。モリアーティにして、ホームズのようなキャラを出したいが裏コンセプト。

    作者が語る思い出 こちらは、実は綾里の作品の中で最も気に入っている一冊です。文体といい、内容といい、各事件の纏まりといい、これと同じものを書けと言われても、二度と書けない。それだけのものを完成させることができたと自負しております。読み返す度に、何がどうして書けたのだろうと途方に暮れております。とはいえ、もう一度、それだけ自分で思うことのできる出来の話に、チャレンジしたいなとはずっと考えております。精進あるのみです。「魔獣調教師」シリーズ 既刊1巻 2016年7月〜 NOVEL0巻 イラスト:鵜飼沙樹

  • 異世界拷問姫 ─ 我が名は『拷問姫』エリザベート・レ・ファニュ。誇り高き狼にして卑しき牝豚である。 自身の領民を拷問して殺した大罪人「拷問姫」エリザベート。異世界にて死亡後、彼女に召喚され、無理やり従者にされた少年瀬名櫂人。二人が織り成す、ダークファンタジーです。第一部は『愚鈍な従者』編。第二部は『拷問姫』編。今年二月に、無事完結を迎えました。血と内臓、神と悪魔、凄惨な戦いと悲劇に彩られた、総括すると愛の話です。

    作者が語る思い出 六巻と最終巻は書き終えた時、こんな話は二度と書けまいと思いました。それだけ魂を込められた作品だと思っております。自分の中の色々なものを削りつつ、美しいものを書きたい。その一念で、最後まで辿り着きました。最近に完結を迎えたシリーズでもあるので、なるべく多くの方に物語の結末までを見届けて頂ければ、本当に幸いだなと思います。まだの方は、どうかよろしくお願い申し上げます。凄惨でありながら、小さな願いの話です。「異世界拷問姫」シリーズ 全10巻 2016年4月〜2020年2月 MF文庫J刊 イラスト:鵜飼沙樹

  • 終焉ノ花嫁 —— 拘束を、隷属を、信頼を、貴方に—— 約束しよう、貴方のために全てを殺すと 舞台は、人類の敵、【キヘイ】と戦う魔導学園。そこに所属する青年、カグロ・コウは、自身を助けてくれた【キヘイ】——白姫と契約を結ぶ。人類と契約した【キヘイ】は【花嫁】、【契約者】は【花婿】と呼ばれる。【花婿】と【花嫁】のみで構成された特殊部隊【百鬼夜行】に転科したコウは、そこで過酷な戦いに身を投じ、運命の日を迎えることとなる。

    作者が語る思い出 綾里初の学園もの。多くのキャラクターを書くのはとても楽しかったです。そして一作目にして、なんだかよくわからないレベルに魂を込められた作品です。十周年目の綾里にできる全ては、こちらに一片の不足もなく詰められたと思っております。そのため、なるべく多くの方に読んで頂きたい一冊でもあります。今できることはこちらで全てやりました。十二分に面白いものができたと自負しております。どうか、よろしくお願い申し上げます。 「終焉ノ花嫁」シリーズ 1巻 2020年7月〜 MF文庫J刊 イラスト:村カルキ