
~第3次世界大戦勃発、恒常的な戦争状態による混乱~
〈聖語〉の最初の使用者が確認される
世界人口の大幅な減少、徐々に科学文明が衰退していく

世界人口はかつての十分の一にまで減少。
〈聖語〉が体系化され、〈聖語騎士ナイト〉が近代的な機能集団として整備される






蒼生、学院の観察処分対象となる

西暦2000年代初頭、全世界同時に英語話者の物理的消失を観測した大惨禍。
その原因は、未だ以て不明。
〈第二のバベル〉の引き金である英語に与えられた呼称。
事件以後その単語・文法は忘れ去られ、半ば神話じみた存在へと化している。
〈第二のバベル〉以後、残された人類の間に突如として現れた言語能力。
各属性に色分けされた言語の筆記・詠唱により、思考を具現化することが出来る。
扱えるか否かは生得的な個人差により、第二言語臨界期を迎える頃までには決定する。
また扱える下地があっても、後天的な訓練を積んで体得しなければ発動は難しい。
発動機構は以下の通り。
言語を筆記・詠唱→〈作用素〉を脳内で描き、〈呪力〉を文法に作用させる→具現化
シルヴィウス学院が育成・輩出する、〈聖語〉を扱える特務官僚の総称。
称号の内訳は次の通り。
〈聖筆騎士スクリーバ〉:〈聖語〉を発動する過程において、筆記を主とする。
〈聖唱騎士チャンター〉:同様に、詠唱を主とする。
〈聖聴騎士インターセプタ〉:言語を聞き取り、敵の通信傍受や即時通訳を担う。
〈聖読騎士ディコーダ〉:暗号・文献解読業務を主とする。
〈聖理騎士リングイスト〉:前時代の言語学者にあたる理論家。
〈聖征騎士ナイト〉:五カ国語以上で上記五技能を征した者。称号保持者は、十年に一度出るかといった頻度。
聖語騎士が、〈呪力〉を増幅させるための触媒に用いる白いチョーク。
筆記呪文の場合は削られた分だけ、詠唱の場合には文量に応じて宙に溶け出す。
火・土・金・水・風―――の五つの言語属性、その優劣と相補を記した言語相関図。
〈相生そうせい〉:他属性を強化する関係
〈火生土〉:火はものを燃やして土にする。
〈土生金〉:土はその内より金属を産出する。
〈金生水〉:金属の表面は、凝結により水を生む。
〈水生風〉:水蒸気は雲となり、風を生む。
〈風生火〉:風は火を燃え上がらせる。
〈相剋そうこく〉:他属性を打ち滅ぼす関係。
〈火剋金〉:火は金属を溶かす。
〈土剋水〉:土は水を濁し、せき止める。
〈金剋風〉:金属の刃は風の刃よりも強い
〈水剋火〉:水は火を消し止める。
〈風剋土〉:風は土を風化させる。
〈相乗そうじょう〉:同属性言語の重ね合わせによる、属性強化。
収束、発散、浮遊、振動、転写・・・等々、思考を〈聖語〉として物理世界に演算させる際の、基本的な空間イメージ。実際に具現化する強度は、呪力に比例する。
各個人に生得的な、思考の実現強度。
同じ文面に〈作用素〉をかける場合、呪力の強い方がその強度も増す。
(例:浮遊呪文ならば、より重たいものを浮遊させられるなど)
極めて高い呪力であれば、制御次第で言語属性を負方向にも作用できる。
(例:雪音の氷結呪文など)
各個人に生得的な、〈聖語〉の筆記・詠唱に使うことの出来る語数上限。
〈聖語〉の文法や筆記・詠唱のミス、また〈臨界語数〉を越えた筆記・詠唱で陥る現象。
一次的な痙攣状態となり、筆記・詠唱を含め、全ての言語の産出が出来なくなる。
五つの言語属性に収まらない、系外言語の総称。
聖なる階梯と読んで字の如く、あと一歩で人類の共通語に昇りきれなかった言語。
(例:精神干渉属性を有するラテン語)
西洋風に言えばアニマ、東洋風に言えば言霊。
聖語騎士の右腕となる、〈聖語〉によって生み出される霊魂の総称。
物理的血肉はあるが、影が存在しないのが特徴。人語を操ることができ、人も喰らう。
召喚に必要となる言語属性・語数が増えるほど、〈言霊〉としての霊力も強くなる。
召喚・使役の難易度で上・中・下と級が分けられている。
またの名を〈血濡れ字引〉。
悪魔の奥義書(グリモワール)にその名を記された、凶悪な上級位〈言霊〉の総称。
各〈言霊〉に固有な特殊能力。上級位は複数持つこともある。
霞ヶ関の一等地に構えたバロック式の赤煉瓦校舎で、聖語騎士の育成・輩出機関。
その敷地は、各省庁・付属機関を連結しながら皇居を一周する広大なもの。
表向きは国内屈指の高等教育機関と、世間にはその実情を秘匿している。
かつての赤坂離宮・迎賓館。学院に包摂され、膨大な蔵書を収める開架書庫となった。
西暦2215年、朱美=シルヴィア=ブラッドフォードが、自らの配下である〈第九師団〉を筆頭に他数師団を皆殺しにした、未曾有の大惨劇。彼女自身は逃走し、今を以て行方知らずとなっている。
以降、彼女は〈緋濡れの魔女〉との忌み名で呼ばれることになった。
朱美=シルヴィア=ブラッドフォードを隊長に据えた、選りすぐりの精鋭部隊。
対外遠征では結成当初から負け知らず、強大国を相手に破竹の快進撃を見せた。
最高権力者である理事長を筆頭に、学院を牛耳る五人の権力者。いわゆる学院上層。
正体は聖語騎士にも明かされず、対話は学院の象徴であるフクロウの〈言霊〉を介する。

〈聖語〉と呼ばれる言語体系が魔法の如く物理世界を書き換える時代――。
史上最強の〈聖語騎士〉を姉に持つ少年・蒼生=カレン=ブラッドフォードは、規格外の言語能力を持ちながらも、ある理由で試験で手を抜いて平均点を取り、目立たぬように〈シルヴィウス学院〉での日々を送っていた。
平凡な同級生には疎まれたりはするものの、学年首席の少女・氷乃華雪音は幼馴染みとして蒼生に寄り添い、留学生の少女・カロリーナは一途に蒼生に想いを寄せ、学院生活は穏やかに営まれていた。
だが、ある事件をきっかけに蒼生と雪音に極秘任務が下り……?
天才的問題児×完全無欠の優等生。大スケール魔法学園ファンタジー、開幕!