1. ホーム
  2. 編集部ブログ
  3. 新刊情報
  4. 同時発売記念! 『探偵はもう、死んでい...

新刊情報

同時発売記念! 『探偵はもう、死んでいる。』著者・二語十&『死亡遊戯で飯を食う。』著者・鵜飼有志Wインタビュー

2023年1月25日にMF文庫Jより同時発売をした

『探偵はもう、死んでいる。8』

『死亡遊戯で飯を食う。2』

両作品はともにMF文庫Jライトノベル新人賞から生まれた作品であり、

若い読者の皆さんから支持を頂いています!

 

このたび、それぞれの著者である二語十先生と鵜飼有志先生から、

自身の作品、そしてお互いの作品について両作を担当する編集がお話を伺いました!

 

Wインタビューの前半は、『ダ・ヴィンチ Web』にて掲載中!

(前半はこちらから)

 

編集部ブログではその後半として、

さらに深く両作品の中身などに踏み込んだお話をしていただきました!

それではインタビュー本編をどうぞ~!

 

 

※両シリーズのネタバレがございます。ご注意ください。

 

 



『探偵はもう、死んでいる。』 (著:二語十、イラスト:うみぼうず)



死亡遊戯で飯を食う。(著:鵜飼有志、イラスト:ねこめたる)

 

 

──ここで同じ新人賞出身の作家として、お互いに聞いてみたいことはありますか?

 

二語十先生(以下、「二」):鵜飼先生は今までどういうジャンルのものを書かれてきたのかな、というのはずっと気になっています。

 

鵜飼有志先生(以下、「鵜」):そうですね、ジャンル……。割と変な感じだったんですね。タイトルを挙げると『現代異能2020』『メタルブレード』『異世界デザイナーたかし君』……これを言わされるのきついですね(笑)

 

──(笑)。僕はこれまで書いたものを見せていただいたんですけど、『ゴーゴーゴキブリガールズ』というものがあって、すごいなと思いました。

 

二:あまりジャンルとか流行には乗っからず、という感じですかね?

 

鵜:そうなんですよね……。

 

──いただいた時にすごいタイトル&ジャンル(?)な作品群で驚きました。『たんもし』(『探偵はもう、死んでいる。』)も闇鍋感が強くてすごいのですが、そんなお二人が影響を受けた作品はありますか?

 

二:ラノベは大学生になるまで全然読んでいなかったのですが『ジャンプ』はずっと読んでいたので、「友情・努力・勝利」的な王道感は根底にあるような気がします。あと投稿時代は好きなラノベの二次創作を趣味でやっていて、その時にキャラの重要性をすごく学びました。キャラが立っていたらこんなに物語って動かしやすいんだ、ということをラノベから学んだなあと思います。

 

鵜:僕もけっこう無数にあるといえばあるんですけども。投稿時代に一番読んでいたのは『イリヤ』(『イリヤの空、UFOの夏』)ですね。冗談ではなく毎日読んでいました。

 

──毎日! 『イリヤ』のどういった点が気に入っていますか?

 

鵜:もちろん、文章です。当時の作家志望者はみんな影響を受けてたと聞きますけど、20年ぐらい遅れて僕もそうなったわけです。本当にすごいものは時を超越するんだなあ、としみじみ思います。

 

──他に影響を受けた作品はいかがでしょう?

 

鵜:初めて物語が面白いと思ったのは確か『逆転裁判』です。多分割と早い段階、中学生くらいで触れたと思います。

 

──小学生のころはあまり物語には触れていなかった?

 

鵜:触れてはいたんですけど、「話自体が面白い」という概念がまだ無かったんだと思います。だから『逆転裁判』をやったときの衝撃がすごかったです。作品全体を覆う空気感とか、すごい好きですね。文章が好きな『イリヤ』も文章によって形作られる雰囲気や空気感が好きなのだと思います。

 

──なるほど。それではこれまで好きになったキャラクターを教えてください。ライトノベルに限らず、男女問わずで。

 

二:基本的には「最終的に結ばれないヒロイン」が好きなんですけど。

 

──それは「負けヒロイン」みたいなことですか?

 

二:「負けヒロイン」と括ってしまうのはなんとなく違和感もあるんですが(笑)、でもやっぱりいわゆるヒロインレースが繰り広げられて、そこで選ばれなかったヒロインを好きになることは多いです。『冴えない彼女の育て方』の澤村・スペンサー・英梨々とか、まさにですね。

 

鵜:多分僕の世代は皆そうだと思うんですが、『めだかボックス』の球磨川禊です。

 

二:『めだかボックス』は僕も読んでいたのでわかります。球磨川を嫌いになれる人間はいないですよね(笑)

 

 

■作品の内容について

──お互いの作品の印象的なシーンを教えてください。

 

鵜:『たんもし』は7巻の終盤です。物語を大きくひっくり返すところですね。ああいう、大風呂敷を広げるシーンが僕は大好きなのです。広げるほうは絶対大変だと思うんですけど。



衝撃の展開の『探偵はもう、死んでいる。7』は好評発売中!

 

二:『死亡遊戯』は1巻の後半のゲーム「キャンドルウッズ」が終わって、殺人鬼を倒した後の幽鬼ともう一人の生き残った少女、藍里の会話シーンですね。「やるかい?」と幽鬼が尋ねるところ。ゲームが終わった後の緊張感が解けたのか解けていないのか、なんとも言語化できないあの空気感がすごく良かったです。

 

──二語十先生は『死亡遊戯』で好きなキャラクターはいましたか?

 

二:まさに藍里がすごく好きです。最初に1巻の原稿を頂いた時にはビジュアルが付いていなかったので、どんなもので来るんだろうと思っていたら、ある意味すごく平凡なビジュアルで。その得体のしれない素朴さや、そういう矛盾も含めて良いキャラクターだと思いました。

 

鵜:実は3巻で再登場します。



(二語十先生が好きだという一見素朴な少女・藍里)

 

二:出てきてほしいなと思っていました(笑)鵜飼先生は『死亡遊戯』を応募していた時点で2巻以降の構想はあったんですか?

 

鵜:それは一切なかったですね。

 

二:担当さんと話しながら作ったんですか?

 

鵜:受賞が決まってから刊行までかなり時間があったので(※約一年)担当さんから「とりあえず続巻を考えてください」と言われてプロットを提出しました。「面白かったので書いてください」と言われて執筆に入ったという流れですね。あまり内容を相談したり揉んだりということは無かったように思います。

 

──『たんもし』は2巻以降の構想はあったんでしたっけ?

 

二:過去編をいつかやれたらと思ってはいたのですが、「2巻でやっちゃいましょう」と言われたので。過去に起きたことや、悲しい別れがあったという構想は既にあったので、それを形にしました。

 

──個人的には2巻が作品の方向性を決定づけたのではと考えているので思い出深いですね。ところでシエスタもユウキもちょこちょこコスプレをしますが、今後させたい、見たい格好はありますか?

 

二:僕は仕事でも良く利用するので、ファミレスが好きなんです。ファミレスのコスチュームをさせてほしい、というのを6巻で入れていたんですが、採用されなかったのでいずれ、と思っています(笑)。

 

鵜:自分はなんとかしてチャイナドレスを着せてやりたいと思っているですが、作中で過去にやったことになっている(※)ので出せないなと……。

 

──そのシーンを過去のエピソードとして組み込むしかないですね。

 

二:すでに使ったことになっているコスチュームをどうするのかな、と気になっていました(笑)

 

鵜:ちなみに2巻では再度過去の話をして、後半では現在の話をしてという2本立てになっているので、今後の巻で過去のゲームをもってくればなんとか……!

 

──本当に魅力的な衣装が既に使われまくっててヤバいな……、と僕も思っています(笑)。

 

※『死亡遊戯で飯を食う。』では、殺人ゲームのプレイヤーは毎度異なるコスプレ衣装(メイド服、バニースーツなど)でゲームに参加させられる。




コスプレが多めな両ヒロイン

 

■イラスト

──両作の大きな魅力の一つであるイラスト。各キャラクターのデザインについては、どのくらい要望を出しましたか? またデザインが上がってきた時のお気持ちをお聞かせください。

 

二:他の作家さんのやり方を知らないので、自分がどのくらい希望を出しているのか分からないですが……。

 

──キャラクター表はオーソドックスにいただいたと思います。キャラデザイン案を送った際の打合せでは毎回「素晴らしい!最高です!」みたいなお返事でした(笑)

 

二:(笑)。本当にそんな感じですね。絵が上手いということとキャラクターデザイン能力が優れていることは別物、ということを業界に入って理解したのですが、うみぼうず先生はキャラデザも優れていてすごいなあと思いました。

 

──そういえば『たんもし』ではリローデッドのキャラデザが素晴らしすぎでメイン回を勝ち取った(8巻エピソード)みたいなことを仰ってましたね(笑)

 

二:そうなんですよね。5巻時点で立ち絵のラフをもらって、めちゃくちゃよかったので。元々ヒロインは最初の4人以上は増やしたくなかったんですが、プラスでミア、リルが加わって今はヒロインは6人と考えています。

 

──今後うみぼうず先生のお力でまたヒロインが増える、ということもあるかもですね(笑)



最新8巻で大活躍のリローデッド

 

二:『死亡遊戯』もあれだけの数のキャラがいながら、どのキャラクターも退場させるのが惜しいキャラデザで、ねこめたる先生も本当にすごいなと思いました。

 

鵜:本当にそうですよね……! 自分も他の作家さんのやり方は知らないのですが、結構くどくどと地の文に容姿を書いているので、注文をつけてしまっている方なのかなと思います。

 

──鵜飼先生もキャラクター表はとても簡素で、「基本お任せします」という感じでしたよ。あがってきたものにも「素晴らしいです!」という感じで、メール文面からとても喜んでいることが伝わってきました。



素晴らしいデザインのキャラクターが次々と退場する『死亡遊戯』

 

──お二人は自分の作品で特に好きなビジュアルのキャラクターはいますか? 

 

鵜:一番は伽羅ですね。「伽羅色の髪」ということ以外、容姿のはっきりしない書き方をしていて、自分でもイメージがあまりなかったのでどうなるかと思っていたのですが。「こうなるんだ、すごいな」と思いました。

 

二:先ほども話題に出ましたが、リローデッドですね。衣装でゴスロリ風か近未来風かをうみぼうず先生にお任せした結果、近未来風になったんですが、正解だったと思います。あとは斎川もですね。確かうみぼうず先生がすごく苦労したと言っていたのですが、皆に凄く愛されるビジュアルになっているのかなと思います。

 

 

■執筆時に考えていたこと

 

──両作ともライトノベル市場の分かりやすいトレンドやジャンル、たとえばラブコメや異世界ものや学園バトルなどとは異なる作品です。どのような考えで執筆、応募をしたのでしょうか?

 

二:よく耳にすることとして、書きたいものと売れるもののバランスを考えるのが大事だと言われているかと思います。それは確かに一理あるのですが、でも売れるものを狙って本当に売れるものを書ける人なんて、プロの中でも一握りもいないじゃないですか。ましてや投稿時代の素人の自分が売れる内容やジャンルを予想して書くのは無理だろうと思いました。一方で先ほども言ったように、二次創作をやってキャラの重要性を認識していたので、キャラを特に信じようと。キャラクターさえよければ、そのキャラクターが面白いストーリーを動かしてくれるだろうと考えていました。

 

──真理ですね。

 

鵜:自分の場合は、これこそがトレンドだと思っていたんですよね。投稿時代に『たんもし』や『スパイ教室』などの隆盛を見て、ライトノベルの文法を使ってそれ以外のジャンルのお話をやっていると解釈したんです。では自分が書けるジャンルが無いかと考えた結果、デスゲームものになりました。

 

──なるほど! ちなみに僕もその考え方は正しいと思っています。両作とも若い読者層によく読まれている作品なのですが、時代観や世代観でどういったことを意識していますか?

 

二:作品、作風やジャンルによると思いますが、自分は分かりやすい面白さを目指していました。緻密な風景描写とか、複雑で語彙にあふれたモノローグのようなことはやらないと決めていて、その分の尺でストーリーを進めたり、キャラクターの掛け合いに描写に割いたりすることを意識していました。

ただ巻数が進むと読者の年齢も上がっていくので、第1巻の時に中学生だった読者は今高校生になっていますよね。巻を進めるにつれて、エンタメ度の濃さのようなものは自分の中では変えています。

 

鵜:自分の場合は、自分自身が高校生くらいまで本をちゃんと読めない人間だったので、そうした読者の存在を念頭に置いています。そういったところが読みやすさになっているのかもしれません。

 

──執筆の際どんな年代の読者に読んで欲しいなどは意識していたりしましたか?

 

鵜:特に無かったですね。そもそも賞を取れるかで必死だったので。

 

二:そうですね。でもMF文庫Jの主要読者層は10代かなと思ったので、ある程度それを目指してはいました。ライトノベル市場全体の読者層は、ジャンルにもよるかと思いますが30代-40代が多い、ということも聞いたことはあって。ただしその30代-40代の人たちも、10代-20代向けに書かれたものが今でも好き、という方もきっと多いのではないかと思っていたので、敢えてチューニングはせずに10-20代に向けて書いて良いのではないかと考えていました。

 

──ともにキャラクターの死が大きな意味を持つ物語となっていますが、それについてどのようにお考えでしょうか。

 

鵜:キャラクターの死について、ものすごくキツいときもあれば、そうでないときもあります。1巻だと萌黄と青井がきつかったです。

 

──それはどういうキツさなんですか?

 

鵜:自分が強く投影されている方がキツいですね。キャラクターの性格に自分の一部が入っていると感情移入してしまうので。

 

──死んでほしくないと思いながらキャラクターが死ぬ、あるいは逆に死なせるつもりが生き残るということはあるんですか?

 

鵜:そうですね。元々生き残らせる予定ではなかったのですが、展開を捻ろうと思った結果生き残る、ということもあります。

 

二:自分も作中でのキャラクターの死についてはとても悩みますね。名前が出てこない人物の生死さえ一日中考えたりしますし、いまだに昔の巻のキャラの生死についてあれで良かったのかなと悩むこともあります。

 

 

──書いていて楽しいシーンやキャラクターを教えてください。

 

鵜:本音を言えばまんべんなく苦しいです。

 

一同:(笑)

 

鵜:でも意味のある苦しさなので、それがあるっていうのは良いことですし、全部楽しいと言ってもいいんじゃないかと思います。苦しいけど、乗り越えたらいいことがある、目的地に向かって走っている中での苦しさです。

 

──キャラクターについてはいかがでしょう?

 

鵜:動かしていて楽しかったのは桃乃ですね。主な視点人物である幽鬼は割とフラットに書いている気がします。幽鬼の思考や思想も自然なものとして納得して書けているのかなと。

 

二:最近はストーリーの展開上、書かなくてはいけない情報量が多いので、その意味ではちょっと大変ですね。そこにどうキャラのかけ合いをねじ込めるかで、そこが上手くハマれば楽しいです。そういう中なので斎川は、ある意味心の安定剤でもあるので、もっと出したいなと思っています。

 




動かしていて楽しいという桃乃(上)、登場すると作品が明るくなる斎川(下)

 

──最後に、読者へのメッセージをお願いします。

 

二:いつもシリーズの応援ありがとうございます。本当にSNSなどでのコメントの熱量がそのまま作品の勢いになっている時代でもあるので、引き続き応援いただけたら嬉しく思います。

 

鵜:最後までお付き合いいただきありがとうございます。『死亡遊戯で飯を食う。』2巻、読んでください。



『死亡遊戯で飯を食う。2』



『探偵はもう、死んでいる。8』