優秀賞かまわれたがりの春霞さん　隣の席のあの子は俺の嘘が好き | 第15回MF文庫Jライトノベル新人賞作品第一弾

かまいすぎ注意！！嘘つきたがり男子高校生　×　だまされたがり（？）ヒロインの青春の行方は？

かまわれたがりな隣の席のクラスメイト春霞陽「嘘はいいけど、いきなり手をつなぐのはダメです」「いきなりじゃなきゃいいのか？」「ダメです！　手をつなぐのは恋人同士になってからです！」隣の席の女の子。UPキャンペーンを始めるまで、誠と言葉を交わしたことは一度もなかったが、どうやら誠斗のことが好きらしい。誠斗の嘘をなんでも信じるため、UP発生装置と化している。

嘘つきたがりの男子高校生卯曽月誠斗「ええと、嘘ついて悪かったな。けど、俺って嘘つかないと（以下同文）」「はい、大丈夫です。わたし、卯曽月くんを信じてますから」「いや、だから、俺の言うことは嘘なんだって……でもまあ、信じてくれると助かる」SNSでの嘘つぶやきで日々ささやかな承認欲求を満たしている男子高校生。熱中症にかかった際やさしく看護してくれた大空真森に片想いしているが、現状進展はほとんど無し。デビの勢いに負け、UPキャンペーンに参加することになる。

陸上したがりの想い人大空真森「あ、卯曽月クンもおっはよぉーさん、しー、ごー、ろく！」「お、おう大空、ええと、いい加減にしろ」走り高跳びに青春をかける部活系少女。見た目に反して中身は残念で、男子からは引かれている。だが、誠斗にとっては恋愛対象のど真ん中。

兄に絡みたがりな妹卯曽月愛「愛のファッションアドバイス！　妹以外の女の子とデートに行くときは、とりあえずおち○ちんさえ丸出しにしてればバッチリＯＫ、これ結論デース！」「おいおい、それじゃお兄ちゃん逮捕されちゃうだろ！」「だから、おち○ちん陳列罪で逮捕されちゃえって言ってるんだよ！」「やめろ愛、いったいどうしたんだ？　あと、おち○ちんなんて言うんじゃありません」「うっさい！　お兄ちゃんのバカ！　嘘つき！」兄大好きな、誠斗の妹。過激な行動に走りがちだが、根は素直。

嘘斡旋したがりな妖精デビ《もしかして、私デスか？　しょうがないなぁ、今から三十分以内にご契約いただければ、通常の半額のＵＰで一夜のお供をさせていただきマスよ》「どんだけ契約取りたいんだよ！　おまえじゃねえからモジモジすんな！」嘘普及機構、通称USOから派遣された嘘つき妖精。誠斗の嘘をつく才能に目をつけ、UPキャンペーンの斡旋でやってきた。

暴走したがりな生徒会長氷鳥沢雛子「そして最後に脚本中のこのモノローグ、『おとぎ話の世界なら、泡になって消えてしまえるのに……もうそれもできない。あたしも、あたしの想いも、波の上を漂うだけ』」「いい台詞ですよねぇ、……ええと、まさか」「自殺を推奨する意図が感じられる。断固容認できないわ！」私立花村学園の生徒会長にして、学園一の美少女。思い込みが激しいのが玉に瑕。

ちょっと聞いてくれ。近所のごみ捨て場に『みだらにゴミを捨てないでください』って貼り紙があったんだ。なんか引っかかるなぁと思ってたら、声を掛けられた。
「ねぇ、お兄さん、ちょっとゴミ捨てを手伝ってくださらなぁい？」
みると、いかにも痴女って感じの女がゴミ袋を手に立っててさ。アハーンとかウフーンとか言いながらグラビアポーズでにじり寄ってくるわけ。抱きつかれそうになった瞬間、「こらーっ！」と怒鳴り声がして近所のおじさんが痴女を追い払ってくれた。でもおじさんは「まったく、ちゃんと貼り紙読めよな」と愚痴りながら、手にしたゴミをポイ捨てするんだよ。それで俺はようやく気がついた訳さ。普通のゴミ捨て場の貼り紙は「みだりにゴミを捨てるな！」だけど、ここは「みだらにゴミを捨てるな！」だってことに。

「春霞、胸にケツがついてるぞ」
「？？？」
「い、いや、なんでもない。忘れてくれ」
（そういや昨日遊園地で言ってたっけ、「普段隠しているところを出さなきゃいけないのが嫌だ」って。いつからデコのことだと錯覚していた？　ありゃ胸の話だったのか！）
あのとき俺はこう答えた。「普段から出しておけばいいんじゃない？　半分くらい出してるヤツいるだろ」春霞はそれを真に受けて、今日のこの格好になったわけだ。
もう一度言う。俺はおっぱい星人ではない。胸が大きかろうが小さかろうが、どうでもいい。だがしかし──これは少し出し過ぎじゃないか？
ちょっと地球儀を想像して欲しい。北極からずぅっと下って、北海道、本州四国、九州、沖縄辺りまでが白日の下にさらされている。沖縄と言えば、平均気温20度。四月には海開きがある南国だ。つまりもうちょっと下にあるのは、赤道。そして赤道付近の海域には台風が発生している。台風はマズい。もし勢力が大きかったら、すぐに予報円がポロリしてしまう。その証拠に、さっきから台風の出現を待ち望む男子どもの視線の圧がハンパなかった。